本文
令和2年度行政監査の結果
第1 監査の対象
1 テーマ
AED(自動体外式除細動器)の設置及び管理等について
2 対象事務
市の施設(指定管理者が管理している施設を含む。)に設置されているAEDの管理等に関する事務。なお、業務として医療従事者(救急活動を含む。)等が使用するために設置されているもの、講習等のための貸出用のものを除く。
3 対象部課
テーマに関係する全部課
第2 監査の目的
AED(自動体外式除細動器)(以下「AED」という。)は心室細動及び無脈性心室頻拍による心停止者の心臓に電気ショックを与えることによって、正常な心臓の動きを取り戻す(除細動する)ための医療機器であるが、その設置については、法的な義務付けはなく、設置者の任意によって行われているのが現状である。平成16年7月1日に非医療従事者である一般市民に一定の条件下でのAEDの使用が認められてから15年以上が経過し、この間、医療機関及び消防機関のみならず、学校、駅、公共施設、商業施設等を中心に国内において急速に普及している。
しかしながら、AEDは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)(以下「医薬品医療機器等法」という。)に規定する高度管理医療機器(※1)及び特定保守管理医療機器(※2)に指定されており、適切な管理が行われなければ、人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある。
AEDは、設置されるだけでなく、いざという時に、心停止傷病者に速やかに使用されることによりその意義を持つものであることから、本市施設のAEDについて、機器等の管理が適切に行われているか、施設の職員が使用できる体制となっているか等の検証を行い、今後、いざという時にAEDが使用される環境整備に資すること、今後の事務の改善に資することを目的に監査を実施した。
※1:医療機器であって、副作用又は機能の障害が生じた場合において人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることからその適切な管理が必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう(医薬品医療機器等法第2条第5項)。
※2:医療機器のうち、保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とすることからその適正な管理が行われなければ疾病の診断、治療又は予防に重大な影響を与えるおそれがあるものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう(医薬品医療機器等法第2条第8項)。
第3 監査の着眼点
1 AEDは施設内のアクセスしやすい場所に設置されているか。
2 AEDを設置している施設の全職員が、その施設内におけるAEDの正確な設置場所を把握しているか。
3 AED設置場所の表示や誘導のための案内表示が利用者にとってわかりやすいものか。
4 日常点検の実施及び消耗品(電極パッド及びバッテリーをいう。以下同じ。)の交換等、AEDが適切に管理されているか。
5 AEDの適切な管理を実施するため、組織的、統一的な事務執行に取り組んでいるか。
6 施設の職員がAEDを使用できる体制になっているか。また、救急蘇生法の習得(講習の受講等)が行われているか。
7 AEDの普及、啓発等は効果的に実施されているか。
第4 監査の主な実施内容
令和2年4月1日現在の本市の施設(指定管理者が管理している施設を含む。)におけるAEDの設置状況等について、全部課に対して文書により調査を行い、その調査結果を踏まえた上で、抽出した施設におけるAEDの設置場所、設置案内表示の状況及び管理状況等について現地で実査を行うとともに、第3に記載した着眼点に基づき、証憑突合、帳簿突合、質問、閲覧により監査を実施した。
第5 監査の実施場所及び日程
1 調査期間
令和2年4月15日から令和2年11月10日まで
2 現地調査及び本監査の実施日及び実施場所
実施日 | 実施場所 | |
---|---|---|
現地調査 | 令和2年5月12日 | 岸和田市立文化会館 |
岸和田市立自泉会館 | ||
岸和田市立浪切ホール | ||
令和2年5月14日 | 岸和田市立福祉総合センター | |
岸和田市立高齢者ふれあいセンター朝陽 | ||
岸和田だんじり会館 | ||
岸和田城 | ||
岸和田市まちづくりの館 | ||
令和2年8月11日 | 岸和田市立山直北小学校 | |
岸和田市立山滝小学校 | ||
岸和田市立山滝中学校 | ||
岸和田市立山直中学校 | ||
令和2年8月12日 | 岸和田市立八木小学校 | |
岸和田市立山直南小学校 | ||
岸和田市立城東小学校 | ||
岸和田市立八木北小学校 | ||
令和2年9月9日 | 岸和田市立浜保育所 | |
岸和田市立旭保育所 | ||
岸和田市立城内保育所 | ||
岸和田市立修斉保育所 | ||
令和2年10月9日 | 岸和田市役所本庁舎 | |
令和2年10月27日 | 岸和田競輪場 | |
岸和田市立山直市民センター | ||
岸和田市立桜台市民センター | ||
岸和田市民道場心技館 | ||
きしわだ自然資料館 | ||
岸和田市立図書館 | ||
令和2年10月28日 | 岸和田市立男女共同参画センター | |
岸和田市立公民館・中央地区公民館 | ||
岸和田市立葛城地区公民館 | ||
岸和田市立山滝地区公民館 | ||
岸和田市立新条地区公民館 | ||
岸和田市立大宮地区公民館 | ||
岸和田市総合体育館 | ||
岸和田市立中央体育館 | ||
令和2年10月29日 | 中央公園管理事務所 | |
浜工業公園(臨海会館) | ||
岸和田市立牛ノ口公園運動広場 | ||
岸和田市立久米田公園運動広場 | ||
岸和田市野田プール | ||
令和2年10月30日 | 岸和田市立保健センター | |
令和2年11月5日 | 市立岸和田市民病院 | |
本監査 | 令和2年11月10日 | 監査委員室 |
第6 AEDに関する国からの主な通知
1 平成16年7月1日付け厚生労働省医政局長通知
「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について」
2 平成21年4月16日付け厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長通知
「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について(注意喚起及び関係団体への周知依頼)」
3 平成25年9月27日付け厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長通知
「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について(再周知)」
4 平成25年9月27日付け厚生労働省医政局長通知
「自動体外式除細動器(AED)の適正配置に関するガイドラインについて(通知)」
5 平成27年8月25日付け厚生労働省医政局長通知
「自動体外式除細動器(AED)設置登録情報の有効活用等について」
6 令和元年5月17日付け厚生労働省医政局長通知
「自動体外式除細動器(AED)の適正配置に関するガイドラインの補訂について」
第7 監査の結果
AEDの設置及び管理等について、第3に記載した監査の着眼点に基づき調査した結果、その概要及び調査結果は以下のとおりである。
1 予備調査
(1) 概要
令和2年4月1日現在(以下「基準日現在」という。)の本市の施設(指定管理者が管理している施設を含む。)におけるAEDの設置状況、AEDの管理状況、AEDの操作方法を含む救命講習の受講状況、AEDの使用に関する普及啓発の実施状況等について確認するために、全部課に対して文書により調査を行った。
(2) 調査結果
ア AEDの設置状況
基準日現在においてAEDを設置している施設は109施設で、AEDの設置台数は123台である(表1)。また、各施設におけるAEDの導入時期は表2のとおりである。
以下、施設の名称について、岸和田市役所本庁舎は「市役所本庁舎」、岸和田市民道場心技館は「市民道場心技館」と表記し、それ以外の施設の中で、「岸和田市立」又は「岸和田市」から始まる施設については「岸和田市立」又は「岸和田市」を省略して表記する。
部課名 | 施設名 | 設置台数 | |
---|---|---|---|
総務部 | 総務管財課 | 市役所本庁舎 | 1台 |
市民環境部 | 東岸和田市民センター | 東岸和田市民センター | 1台 |
山直市民センター | 山直市民センター | 1台 | |
春木市民センター | 春木市民センター | 1台 | |
八木市民センター | 八木市民センター | 1台 | |
桜台市民センター | 桜台市民センター | 1台 | |
人権・男女共同参画課 | 男女共同参画センター | 1台 | |
福祉部 | 福祉政策課 | 福祉総合センター | 1台 |
高齢者ふれあいセンター朝陽 | 1台 | ||
保健部 | 健康推進課 | 保健センター | 1台 |
子ども家庭応援部 | 子育て施設課 | 浜保育所 | 1台 |
千喜里保育所 | 1台 | ||
大宮保育所 | 1台 | ||
旭保育所 | 1台 | ||
山直北保育所 | 1台 | ||
春木保育所 | 1台 | ||
城北保育所 | 1台 | ||
城内保育所 | 1台 | ||
八木北保育所 | 1台 | ||
修斉保育所 | 1台 | ||
桜台保育所 | 1台 | ||
総合通園センター | 1台 | ||
魅力創造部 | 観光課 | 岸和田だんじり会館 | 1台 |
岸和田城 | 1台 | ||
まちづくりの館 | 1台 | ||
文化国際課 | 文化会館 | 1台 | |
自泉会館 | 1台 | ||
浪切ホール | 1台 | ||
建設部 | 水とみどり課 | 中央公園管理事務所 | 1台 |
浜工業公園(臨海会館) | 1台 | ||
南公園(小体育館) | 1台 | ||
公営競技事業所 | 岸和田競輪場 | 2台 | |
市民病院事務局 | 経営管理課 | 市立岸和田市民病院 | 5台 |
教育総務部 | 総務課 | 岸城幼稚園 | 1台 |
東光幼稚園 | 1台 | ||
城北幼稚園 | 1台 | ||
中央小学校 | 1台 | ||
城内小学校 | 1台 | ||
浜小学校 | 1台 | ||
朝陽小学校 | 1台 | ||
東光小学校 | 1台 | ||
旭小学校 | 1台 | ||
修斉小学校 | 1台 | ||
東葛城小学校 | 1台 | ||
春木小学校 | 1台 | ||
大芝小学校 | 1台 | ||
大宮小学校 | 1台 | ||
八木小学校 | 1台 | ||
光明小学校 | 1台 | ||
常盤小学校 | 1台 | ||
山直北小学校 | 1台 | ||
山直南小学校 | 1台 | ||
山滝小学校 | 1台 | ||
新条小学校 | 1台 | ||
八木南小学校 | 1台 | ||
城北小学校 | 1台 | ||
城東小学校 | 1台 | ||
八木北小学校 | 1台 | ||
天神山小学校 | 1台 | ||
太田小学校 | 1台 | ||
岸城中学校 | 2台 | ||
光陽中学校 | 2台 | ||
葛城中学校 | 2台 | ||
久米田中学校 | 2台 | ||
春木中学校 | 1台 | ||
山滝中学校 | 1台 | ||
山直中学校 | 2台 | ||
北中学校 | 1台 | ||
桜台中学校 | 2台 | ||
野村中学校 | 2台 | ||
土生中学校 | 2台 | ||
産業高等学校 | 1台 | ||
生涯学習部 | 生涯学習課 | 公民館・中央地区公民館 | 1台 |
春木地区公民館・春木青少年会館 | 1台 | ||
葛城地区公民館 | 1台 | ||
光陽地区公民館 | 1台 | ||
山滝地区公民館 | 1台 | ||
城北地区公民館 | 1台 | ||
大芝地区公民館 | 1台 | ||
葛城上地区公民館 | 1台 | ||
光明地区公民館 | 1台 | ||
新条地区公民館 | 1台 | ||
天神山地区公民館 | 1台 | ||
大宮地区公民館 | 1台 | ||
久米田青少年会館 | 1台 | ||
箕土路青少年会館 | 1台 | ||
スポーツ振興課 | 総合体育館 | 2台 | |
中央体育館 | 1台 | ||
市民道場心技館 | 1台 | ||
牛ノ口公園運動広場 | 1台 | ||
久米田公園運動広場 | 1台 | ||
葛城運動広場 | 1台 | ||
春木運動広場 | 1台 | ||
八木運動広場 | 1台 | ||
野田プール | 1台 | ||
葛城プール | 1台 | ||
山滝プール | 1台 | ||
春木プール | 1台 | ||
朝陽プール | 1台 | ||
浜プール | 1台 | ||
今木プール | 1台 | ||
城北プール | 1台 | ||
山直北プール | 1台 | ||
桜台プール | 1台 | ||
太田プール | 1台 | ||
八木北プール | 1台 | ||
郷土文化課 | きしわだ自然資料館 | 1台 | |
図書館 | 図書館 | 1台 | |
消防署 | 消防署 | 1台 | |
合 計 | 123台 |
導入年度 | 施設数 | 導入年度 | 施設数 |
---|---|---|---|
平成17年度 | 2 | 平成25年度 | 9 |
平成18年度 | 13 | 平成26年度 | 1 |
平成19年度 | 24 | 平成27年度 | 0 |
平成20年度 | 20 | 平成28年度 | 0 |
平成21年度 | 3 | 平成29年度 | 1 |
平成22年度 | 14 | 平成30年度 | 1 |
平成23年度 | 0 | 令和元年度 | 2 |
平成24年度 | 17 | 不 明 | 2 |
(※)施設の開館により従前の施設からAEDを移設している場合は、現施設が開館した年度で集計している。
イ AEDの設置形態
設置されているAED123台のうち、市が設置しているものは109台、指定管理者が設置しているものは6台、それ以外のものは8台であった。
また、市が設置しているAED109台のうち、リース契約により設置しているものは103台、購入により設置しているものは5台、寄贈により設置しているものは1台であった。なお、基準日現在寄贈により設置されていた1台については、現地調査時点においてはリース契約によるものに更新されていた。
ウ AEDの使用可能日及び使用可能時間
AEDを設置している109施設について、AEDの使用可能日及び使用可能時間を調査したところ、24時間365日使用可能である施設は18施設、施設の開館日・開館時間に使用可能である施設は89施設、それ以外の施設は2施設であった。
エ 日常点検等の実施状況
AED機器本体には、AEDが正常に使用可能な状態かどうかをセルフチェックする機能があり、その結果がインジケータに表示される。平成21年4月16日付け厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長通知(以下「平成21年厚生労働省通知」という。)により、AEDの設置者(AEDの設置及び管理について責任を有する者。施設の管理者等。)は、点検担当者を配置し、日常点検等を実施させることとされており、点検担当者は、AED本体のインジケータのランプの色や表示を日常的に確認し記録すること、また、AED本体又は収納ケース等に電極パッド及びバッテリーの交換時期等を記載した表示ラベルを取り付け、消耗品の交換時期を日頃から把握し、交換を適切に実施することとされている。
各施設に設置されているAED123台について、インジケータの表示を確認する日常点検等の実施状況を調査したところ、表3のとおりであった。
点検担当者の配置 | 点検担当者を決めている | 74台 |
---|---|---|
点検担当者を決めていない | 49台 | |
点検マニュアルの有無 | マニュアルがある | 107台 |
マニュアルがない | 16台 | |
日常点検(インジケータの確認)の頻度 | 毎日点検している | 12台 |
週に1回程度点検している | 12台 | |
月に1回程度点検している | 37台 | |
点検していない | 47台 | |
その他 | 15台 | |
日常点検の記録 | 記録している | 19台 |
記録していない | 103台 | |
その他 | 1台 | |
表示ラベルの取付け | 取り付けている | 102台 |
取り付けていない | 21台 |
オ AEDの使用状況
AED導入後基準日現在までの使用状況を調査したところ、5年より前に使用したことがある施設が3施設、5年以内に使用したことがある施設は3施設であった。なお、5年より前に使用したことがある施設のうち1施設については、現地調査時点において、令和2年度中にも使用していたことを確認した。それ以外に、施設に設置しているAEDを近隣住民の要請で貸し出して使用したことがある施設が1施設あった。
カ AEDの操作方法を含む救命講習の受講状況
一般財団法人日本救急医療財団が取りまとめた「AEDの適正配置に関するガイドライン」(平成30年12月25日補訂。以下「ガイドライン」という。)が、令和元年5月17日付け厚生労働省医政局長通知により情報提供されている。このガイドラインによると、AED設置施設関係者は、より高い頻度でAEDを用いた救命処置を必要とする現場に遭遇する可能性があるため、日頃から施設内の最寄りのAEDの設置場所を把握しておくとともに、AEDを含む心肺蘇生の訓練を定期的に受けておくことや、突然の心停止が発生した際の傷病者への対応を想定した訓練を行うことが望まれるとされている。
職員等のAEDの操作などを含む救命講習の受講状況に関する調査結果は、表4のとおりである。受講したことがある職員等が2,602人(79.8%)となっている。
【表4】
受講したことがある | 左のうち、3年以内に受講したことがある | 受講したことがない | |
---|---|---|---|
職員(※) | 1,050人 | 314人 | 535人 |
学校園教職員(※) | 1,323人 | 1,279人 | 43人 |
指定管理者 | 89人 | 81人 | 50人 |
その他施設管理委託者等 | 140人 | 132人 | 29人 |
合 計 | 2,602人 | 1,806人 | 657人 |
(※)AEDを設置していない施設の職員を含む。
キ AEDの使用に関する普及啓発の実施状況
令和元年度中の救命講習の実施状況を調査したところ、市民及び市内事業所を対象に、消防署による救命講習が実施されていた。課や施設での取組としては、市の新規採用職員研修、ファミリー・サポート事業に伴う研修において救命講習が実施されていた。学校園においては、小学校の研修会に参加している幼稚園も含めて43校(園)で教職員研修が実施されており、保護者と合同で実施しているものもあった。また、児童・生徒を対象に救命講習を実施している学校もあった。保育所等においては、13園全てで職員研修が実施されていた。それ以外の施設においては、職員研修が3施設、市民や施設利用者を対象にした講習が5施設で実施されていた。
2 現地調査
(1) 概要
予備調査の結果を踏まえ、機器の耐用期間が経過していると思われる施設や日常点検の実施状況等から判断し管理状況の確認が必要と考えられる施設、心停止発生リスクが高いと考えられるスポーツ関連施設、その他施設の種類や所在場所のバランスを考慮して抽出した42施設に設置されている48台のAEDを対象に、AEDの設置場所、設置案内表示の状況、AEDの管理状況、施設の職員がAEDを使用できる体制になっているか等について、現地調査を実施した。なお、令和2年5月から10月実施の定期監査の対象部課(学校園及び保育所を含む。)については、定期監査の実施に併せて、現地調査を実施した。現地調査を行った施設は、第5に記載した現地調査の実施場所のとおりである。なお、岸和田競輪場については、設置しているAED2台中1台を対象に現地調査を実施した。
(2) 調査結果
ア AEDの設置場所
ガイドラインでは、心停止発生から長くても5分以内にAEDの装着ができる体制が望まれるとされており、そのためには、施設内のAEDはアクセスしやすい場所に配置されていることが望ましいとされている。
現地調査したAED48台は、誰もがアクセスできる場所に設置されており、AEDの設置場所までの通路やAEDの設置場所の前に通行の障害となるものは置かれていなかった。また、AEDが収納ボックスに保管されている場合、鍵の施錠等はされておらず、誰でも扉が速やかに開けられる状態になっていることを確認した。
また、ガイドラインでは、温度(夏の高温や冬場の低温)や風雨による影響などを考慮し、壊れにくく管理しやすい環境へ配置することも重要であるとされている。
現地調査したAED48台は、室内に設置されているものが42台で、室外に設置されている6台については、建物外壁の収納ボックス内に配置されており、壊れにくく管理しやすい環境に配置されていることを確認した。
イ AEDの設置場所の周知
AEDの施設内での配置について、ガイドラインでは、施設の全職員が、その施設内におけるAEDの正確な設置場所を把握していることが求められるとされている。
各施設の職員がAEDの正確な設置場所を把握できているかどうかについて調査したところ、職員研修や避難訓練等の際にAEDの設置場所、操作方法等について職員に周知している施設や、規模の小さい施設の場合で、入口付近にAEDを設置することで施設職員がいつでも認知できる状態にある施設など、おおむね施設の全職員が設置場所を把握している状態にあったが、全職員に十分に周知されているとまでは言い難い施設が一部見受けられた。
ウ AED設置場所の表示や誘導のための案内表示
AEDの設置表示や案内表示について、平成27年8月25日付け厚生労働省医政局長通知(以下「平成27年厚生労働省通知」という。)により、AEDが必要な時にAEDを設置している場所にたどり着けるよう、施設の入口においてはステッカーを表示すること、施設内ではAEDの設置場所まで誘導する案内表示を置くことなどの取組をすることとされている。また、ガイドラインでは、AEDの配置場所が容易に把握できるように施設の見やすい場所に配置し、位置を示す掲示、あるいは位置案内のサインボードなどを適切に掲示することが求められるとされている。
各施設において、AEDの設置表示等の有無を調査したところ、表5のとおりであった。
表示あり | 表示なし | |
---|---|---|
施設の入口等における表示 | 30施設 | 12施設 |
施設内における案内表示 | 7施設 | (※)35施設 |
AEDの設置場所における表示 | 40台 | 8台 |
(※)35施設の中には、規模の小さい施設の入口付近に設置されている等、施設内における案内表示がなくても施設職員や利用者がAEDの設置場所を把握できる状態のものも含まれている。
エ AEDの管理状況
(ア) 日常点検の実施状況
現地調査において、インジケータの表示を確認する日常点検の実施状況について調査したところ、毎日点検しているものが13台、週1回又は月1回程度のものが12台、年数回程度など不定期のものが7台、消耗品交換時のみのものが2台、点検していないものが13台、聞き取りできなかったものが1台あった。また、日常点検結果について記録されているものは15台であった。なお、予備調査では日常点検や記録をしていないとされていたが、点検していることや記録していることを確認できたものがあった一方、予備調査では点検しているとされていたが、点検していることを確認できなかったものもあった。
また、現地調査において、AED48台のインジケータの表示を確認したところ、全て正常に使用可能な状態を示していた。
(イ) AED本体の管理状況
AEDは高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器であり、品質、有効性及び安全性の確保を維持する期間を明確化するために、標準的な使用条件のもとで正常に使用できる期限として、機種ごとに耐用期間が設定されている。
現地調査において、AED本体の耐用期間が経過していないか調査したところ、耐用期間を経過しているものが4台あった。
(ウ) 消耗品の管理状況
現地調査において、表示ラベルによる消耗品の管理状況について調査したところ、AED本体又は収納ケース等に表示ラベルが取り付けられていないものが3台あり、表示ラベルが収納ボックス等の外から確認できなかったものが8台あった。なお、予備調査では表示ラベルを取り付けていないとされていたが、取り付けていることを確認できたものがあった一方、予備調査では取り付けているとされていたが、取り付けていることを確認できなかったものもあった。また、表示ラベルの記載内容を確認したところ、電極パッド及びバッテリーの交換時期等がおおむね記載されていたが、バッテリーの装着日や交換時期が記載されていないものが3台あり、バッテリーの装着日の記載を誤っていたものが1台あった。
また、消耗品の使用期限が経過していないか調査したところ、電極パッドの使用期限が経過しているものはなかったが、表示ラベルに記載されているバッテリーの交換時期を経過しているものが1台あった。
オ AEDの操作方法等の習得状況
AEDを設置する施設には、AEDを使用した応急手当ができる体制を整備することが求められるため、救急蘇生法の習得(講習の受講等)が行われているかについて調査したところ、救命講習を受講したことのある職員等がいる施設がほとんどであったが、現地調査時に受講したことのある職員等がいなかった施設が一部見受けられた。
カ AEDの設置登録情報の有効活用等
AEDの普及に伴い、平成27年厚生労働省通知により、一般財団法人日本救急医療財団へのAEDの設置登録や当該財団において作成された日本救急医療財団全国AEDマップ(以下「全国AEDマップ」という。)の活用等の周知が依頼されている。また、大阪府においても、大阪府AEDマップへの登録及び情報提供の事業を進めており、事業への協力が依頼されている。
現地調査した42施設について、全国AEDマップ及び大阪府AEDマップへの登録状況について調査したところ、表6のとおりであった。なお、どちらのAEDマップにも登録されていない施設が4施設あった。また、AEDマップに登録していない理由を確認したところ、施設に職員等が常駐していない、施設の開場時期が限定されている施設もあったが、AEDマップについての認識がない施設もあった。それぞれのAEDマップの登録内容を確認したところ、全国AEDマップにおいて、登録されている施設名に誤りがあるもの、登録されている施設の地図上の位置が実際の施設の位置とずれているもの、AEDの設置場所が変更されているにもかかわらずAEDマップに掲載されている情報が更新されていないものがあった。大阪府AEDマップにおいても、登録されている施設の地図上の位置が実際の施設の位置とずれているものがあった。
全国AEDマップ | 大阪府AEDマップ | ||
---|---|---|---|
登録あり | 登録なし | 登録あり | 登録なし |
25施設 | 17施設 | 32施設 | 10施設 |
第8 意見
AEDは、平成16年7月に非医療従事者である一般市民にも使用が認められて以降、学校、駅、公共施設、商業施設等を中心に急速に普及しているが、AEDの設置について法的な義務付けはなく、設置者の任意によって行われているのが現状である。ガイドラインでは、AEDの設置が推奨される施設が示されており、厚生労働省ではこれを参考に設置拡大を進めるよう通知を行っている。本市においては、市庁舎、高齢者福祉施設、スポーツ関連施設、公民館、学校園等、ガイドラインでAEDの設置が推奨される施設におおむね設置されていた。
42施設に設置されている48台のAEDについて現地調査を行った結果、全てのAEDのインジケータの表示が、AEDが正常に使用可能な状態を示していることを確認したが、AED本体の耐用期間を経過しているものがあり、その中には表示ラベルに記載されているバッテリーの交換時期を経過しているものもあった。現地調査時点では、インジケータの表示は正常に使用可能な状態を示していたものの、耐用期間を経過した機器についてはいざという時に正常に作動しないリスクがある。また、バッテリーの使用期限を経過すると機器が作動しないおそれや、十分な効果が得られないことも危惧される。平成26年7月9日付け一般社団法人電子情報技術産業協会発出の「『耐用期間』を過ぎたAEDの速やかな更新のお願い」によると、AEDは高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器であり、品質、有効性及び安全性の確保を維持する期間を明確化するために、機種ごとに耐用期間が設定されており、耐用期間を過ぎたAEDはできる限り速やかな更新を勧めるとされている。AEDは緊急時に使用できなければ人の生命や健康に重大な影響を与えるおそれのある機器である。緊急時に使用できないリスクを減らすためにも、AED本体及び消耗品の計画的な更新及び適正な管理に努められたい。
日常点検の実施について、平成21年厚生労働省通知では、AEDの設置者は、点検担当者を配置し、点検担当者は、AED本体のインジケータのランプの色や表示を日常的に確認し、記録することとされているが、日常点検していないもの、点検結果を記録していないものが複数見受けられた。日常点検は、AEDが正常に使用できる状態を維持するために重要である。点検担当者は複数の者による当番制とすることでも差し支えないとされているので、複数人の配置を行うなどの方法も含め、担当者を決めて適切に実施されたい。また、点検結果を記録することや施設の管理責任者等が実施状況を確認することにより、点検漏れを防ぐ効果が期待できると考えることから、点検結果の記録及び実施状況の確認を行われたい。
消耗品の管理について、平成21年厚生労働省通知では、点検担当者は、表示ラベルに電極パッド及びバッテリーの交換時期等を記載し、記載内容を外部から容易に確認できるようにAED本体又は収納ケース等に表示ラベルを取り付け、これらの交換時期を日頃から把握し、交換を適切に実施することとされているが、表示ラベルが取り付けられていないもの、表示ラベルが収納ボックス等の外から確認できないもの、表示ラベルにバッテリーの装着日や交換時期が記載されていないもの、記載内容を誤っていたものがあった。表示ラベルは、その記載内容を確認することで消耗品の交換時期を把握するための手段である。表示ラベルに正確な情報が記載されていないと、使用期限切れの状態を招きかねないことから、点検担当者は、消耗品の使用期限を認識するとともに、表示ラベルに正確な情報を記載し、適切に管理されたい。
AEDは設置され、適正に管理されているだけでなく、いざという時に速やかに使用できる体制になっているかが重要である。AEDの操作方法等の習得について、施設における職員研修の実施状況を確認したところ、学校園において、教職員を対象とした研修、保護者と合同での研修が実施されており、保育所等では全ての園で職員研修が実施されていた。それ以外の施設では、職員研修が実施されている施設もあったが、実施していない施設が多かった。施設において定期的な研修を実施する等、AEDを使用できる体制の整備について検討を望む。
AEDの設置情報は、市民や救急医療機関があらかじめ地域のAEDの設置場所を把握し、必要な時に迅速に使用できるようにするために重要である。ガイドラインでは、AEDの設置情報を積極的に日本救急医療財団や地方公共団体が運営するAEDマップに登録し、住民に情報提供することが望ましいとされている。本市では、ホームページ、健康だよりに設置施設一覧を掲載し、ホームページには、大阪府AEDマップのリンクを張り、市民に情報提供が行われている。全国AEDマップ及び大阪府AEDマップの登録状況を確認したところ、登録されていないもの、登録されている施設名に誤りがあるもの、登録されている施設の地図上の位置が実際の施設の位置とずれているもの、AEDの設置場所が変更されているにもかかわらず登録情報が更新されていないものがあった。市民に正確な情報を提供するため、施設所管部課等においては、登録状況を定期的に確認し、適宜情報を更新されたい。
今回の行政監査において、AED本体や消耗品の管理、日常点検の必要性や方法等、AEDの管理に関する基本的な情報や通知が施設に勤務する職員等に十分に周知されていないように見受けられるところもあった。AEDは設置するだけでなく、その後の管理や講習等を継続して行っていくこと、緊急時にAEDの設置場所が誰でもわかるように表示し施設利用者等に設置場所を周知しておくことが重要である。AEDを設置している施設所管部課等においては、全ての施設でAEDを使用する可能性があることを認識し、施設内における管理状況を再確認し、適切な管理に努められたい。日頃の管理や講習等を継続して行っていくことで、いざという時に使用できる環境の整備が図られることを望む。