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岸和田市立幼稚園及び保育所再編方針【改訂】(案)策定の経過について
就学前児童に対する教育・保育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培うものとして、非常に重要です。
近年、核家族化や就労形態などライフスタイルの変化に伴い、子育てに対する保護者の考え方も多様化しており、本市においても、保育所の需要が伸び、長年にわたり待機児童の解消が図れていない一方で、市立幼稚園の入園希望者が減少しており、1園あたりの園児数が30人以下の園が複数存在している状況にあります。さらに多くの施設が建築後40年以上を経過するなど、施設の老朽化が顕著になっており、早急に課題の解消を図る必要があります。
このような状況のもと、令和元年度に外部の有識者・保護者等で構成する「岸和田市立幼稚園及び保育所あり方検討委員会」を設置し、就学前児童に対する幼児教育・保育のあり方について審議を行い、「子ども・保護者にとって、より良い教育・保育環境の充実を図ることを第一の目的に、市立幼稚園及び保育所を再編すべき」との答申をいただきました。
市と教育委員会では、今後の児童数の動向も見据え、良質な教育・保育環境の充実を図ることを目的とした「岸和田市立幼稚園及び保育所再編方針」を策定し、課題解消に向け、市立幼稚園及び保育所の再編に取り組む予定でしたが、令和2年3月定例市議会において、関連する議案の承認を得ることができませんでした。
この結果を受け、これまで寄せられたご意見を踏まえ、同再編方針を見直した、「岸和田市立幼稚園及び保育所再編方針【改訂】(案)」を策定しましたので、再度、意見公募(パブリックコメント)を行うこととしました。
岸和田市立幼稚園及び保育所再編方針【改訂】(案)を策定しました。
再編方針【改訂】(案)の見直しのポイントは、大きく2点です。
1、地域(3次生活圏)ごとに市立認定こども園を設置
前回の再編方針では、市立施設の取扱いについては民間活力の導入状況の効果検証を行いながら、引き続きそのあり方について検討することとしていました。
改訂(案)では、地域(3次生活圏)ごとに、原則1箇所の市立認定こども園を設置し、これまで市立幼稚園及び保育所で培ってきた知識や経験を継承するとともに、次のような機能・役割を担い、民間園と連携・協力しながら、教育・保育環境の充実を目指します。
市立認定こども園が果たすべき機能・役割
- 全ての就学前児童に対する教育・保育の保障
- 小学校との接続カリキュラム等の研究・開発、民間園への普及・支援
- 就学前教育・保育に関するパイロット事業(試行的事業)の実施
- 支援を必要とする児童に適した教育・保育の提供と環境整備
- 民間事業者の参入が困難な地域における児童の受入れ
- 多様な保護者ニーズへの対応
- 市立施設を希望する保護者の選択肢の確保
2、再編の全体像と計画期間を明示
今後の就学前児童数及び施設の整備状況を踏まえつつ、34施設(市立幼稚園23 市立保育所11)を公民併せて14から19の認定こども園に再編し、今後10年を目途に再編を行うこととします。
就学前児童に対する教育・保育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培うものとして重要であり、これまで市立幼稚園及び保育所における教育・保育環境の充実を図ってきました。
しかしながら、ライフスタイルの変化、保護者ニーズの多様化等により、様々な課題が生じています。将来世代に対して、これ以上、課題解決の先送りはできません。
市立幼稚園及び保育所の再編にあたっては、就学前児童に対する教育・保育が生涯にわたる人格形成の基礎を培うものとして非常に重要であることを踏まえつつ、民間園とより一層連携・協力しながら、子ども・保護者にとってより良い教育・保育環境の充実を図り、“子育てしやすいまち岸和田”を目指します。
市立幼稚園及び保育所の再編にあたっての市の考え方
Q、市立幼稚園と保育所をなぜ再編するのか。
1、就学前児童数の減少
本市の0歳から5歳の人口は、昭和50年に19,671人となりピークを迎えました。その後は全体的に減少傾向にあり、平成27年は9,724人となり、ピーク時の半分以下になっています。今後も就学前児童人口は減少傾向が続くと予想されています。
2、共働き世帯率の上昇
本市では子どもがいる共働き世帯の割合が増加しています。0歳から5歳の子どもがいる世帯に限定すると、平成27年では昭和60年と比べて15%以上増加し、50%に近づくものとなっています。
3、待機児童の増加
保育所に入れない待機児童数(特に1歳~2歳児)が高い値で推移しています。0歳から5歳の人口は平成23年から令和2年の10年間で10,995人から8,793人へと約20.0%減少していますが、保育施設の入所申込者数は4,160人から4,454人へと約7.1%増加しており、保育施設の定員が入所申込者の増加に追いついていません。
そのため、保育所に入所できない児童が発生しており、待機児童が解消されていない状況です。
4、幼稚園の就園率の低下(定員割れの発生)
本市では市立幼稚園が23園ありますが、就園率の低下(定員割れ)が生じており、特に4歳~5歳児においては定員の56.4%と大幅な定員割れが生じています。また、個々の施設でみた場合、30人以下の幼稚園が10園あり、そのうち2園が10人以下となっています。集団での教育効果が得られるよう施設規模を検討する必要があります。
5、市立施設の老朽化
就学前施設の多くが建築後40年を経過しており、施設の老朽化が進んでおり、今後10年から20年以内に施設の大規模改修や建替えを検討する必要があります。
現状と課題 |
今後の就学前児童に対する教育・保育の考え方(課題解決策) |
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就学前児童数の減少 幼稚園の小規模化 |
市立幼稚園及び保育所を集約し、認定こども園へ再編を行うことにより、幼稚園の小規模化を解消し、就学前教育における集団規模の確保を図ります。 |
地域(3次生活圏)ごとに再編を行うことにより、幼稚園の小規模化及び待機児童を解消し、教育・保育環境の充実を図ります。 |
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共働き世帯率の上昇 待機児童の増加 |
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民間事業者の積極的な参入により、認定こども園の整備を促進し、速やかに待機児童の解消を図ります。 |
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市立施設の老朽化 |
市立認定こども園の設置にあたっては、必要に応じて既存ストックの改修工事を行うことにより、老朽化の解消を図ります。 |
支援を必要とする児童の増加 |
市立認定こども園の設置により、引き続き支援を必要とする児童の受け入れを行いつつ、これまで培ってきた知識や経験を民間園へ普及・支援することにより、教育・保育環境の充実を図ります。 |
補助金制度の再構築、共同研究会の開催等による市と民間園との連携・協力体制を強化することによって、民間園での受入枠の拡大を図ります。 |
これらの課題を解決し、”子ども・保護者にとって、より良い教育・保育環境の充実を図ること”を第一の目的に、市立幼稚園及び保育所の再編を行います。
Q、市立幼稚園と保育所をなぜ認定こども園に再編するのか。
核家族化や就労形態などライフスタイルの変化に伴い、子育てに対する保護者の考え方も多様化する中、令和元年10月には幼児教育保育の無償化が始まり、今後ますます保育ニーズの高まりが予想され、すべての子育て家庭への支援など、保育の質・量の拡大が求められています。
市立幼稚園に目を向けると、4・5歳児で定員割れが発生したり、1学級あたりの園児数が減少するなど、集団での教育効果を得る上で望ましい園児数となるよう施設規模を検討する必要があります。
その一方で、市内全体を見渡すと、長年待機児童の解消が図れず、増え続ける保育ニーズに対応できていない状況が続いています。
このような状況の中、国においては平成18年に教育・保育ニーズに対応する新たな選択肢となる幼保一体化施設として、認定こども園制度が創設され、平成27年には「子ども・子育て支援新制度」がスタートし、それ以降、保育ニーズに合致するものとして、全国・大阪府内でも認定こども園の設置が増加しています。
本市においても、これまでの枠組みに捉われずに、市立幼稚園及び保育所を就学前施設として一体的に捉え、将来の就学前児童数を見据えつつ、今後10年間を目途に市立幼稚園及び保育所を集約し、順次認定こども園へ再編します。
Q、認定こども園とはどういったものか。
認定こども園とは、幼稚園と保育所のそれぞれの長所を活かしながら、その両方の役割を果たすことが出来る施設です。 また地域の子育て支援の拠点施設として、保護者の子育てに関する相談窓口の機能も担う施設です。
認定こども園概要(こども家庭庁ホームページ)はこちら【外部リンク】
幼稚園や保育所では、保護者の就労状況等が変化した場合には転園等が必要でしたが、認定こども園では、認定区分の変更により、引き続き通い慣れた園を利用することができ、更には認定区分の設定等によって、保育ニーズへの対応や待機児童の解消にも寄与することが可能となりました。
認定こども園の運営にあたっては、国が定める「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」に基づき行われています(市立と民間の違いはありません)。
また認定こども園の職員の資格は、保育士資格、幼稚園教諭を併せ持った「保育教諭」になります。
保育所(園)・幼稚園・認定こども園の制度比較 [PDFファイル/118KB]
【認定こども園の特長】
- 満3歳児以上の保育部分利用者(2号認定者)は、保護者の就労状況が変化した場合でも、同じ施設で教育・保育を受けることができ、転園の必要はありません(認定こども園区分変更のみ)。
- 教育部分利用者(1号認定者)の場合でも給食を利用することができます。
- 教育部分利用者(1号認定者)の方は、預かり時間は概ね4時間が教育標準時間とされていますが、延長(預かり)保育が利用可能です。
- 教育部分利用者(1号認定者)の方は、夏休み・春休みといった長期休みがありますが、通園可能な施設もあります。
認定こども園へ再編することにより、幼稚園と保育所が一体化し、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に基づいた教育・保育環境の充実、また長年抱えている幼稚園における小規模化の解消、保育所における待機児童の解消を図りたいと考えています。
Q、市立幼稚園と保育所の再編になぜ民間活力を導入するのか。
本市の状況を見た場合、既に多くの法人が教育・保育の提供主体となっており、各園の保育理念に基づいた様々な活動を実施する等、特色ある教育・保育が行われており、既に十分な実績があります。
そういった中、ライフスタイルの変化に伴い、子育てに対する保護者ニーズも多様化・複雑化する等大きく変化する中、民間園のノウハウや柔軟な発想を十分に活かすことで、保護者ニーズにも対応していくことが可能と考えます。
また、幼稚園・保育所の建築後の経過年数を見ると、ほとんどの施設が建築後40年を経過しており、今後、大規模改修や建替えを検討する必要があります。
平成28年3月に策定された「岸和田市公共施設最適化計画」においても、今後真に必要な施設を維持していくために、施設の適正量への一定の削減が必要と示されています。
また、国の財政措置を見た場合、民間事業者が整備する場合、国・府からの財源措置を受けることができますが、市が整備する場合、財源措置がほとんどありません。
認定こども園整備にかかる財源構成とその割合
【整備条件:定員150人(うち1号認定者 30人)・整備費 6億円(設計・工事)】


こういった状況を踏まえ、市立幼稚園・保育所の認定こども園化を進めるにあたっては、民間事業者の積極的な参入を図ります。
これにより、民間業者ならではの自由な発想や特色が発揮されるとともに、削減される経費については、子どもに関する施策に還元し、教育・保育環境の向上に努めます。
Q、今後、市立幼稚園及び保育所はどうなっていくのか。
本市には23の市立幼稚園、11の市立保育所があります。今後、本市においても国、大阪府内の動向を踏まえながら、これまでの枠組みに捉われず、市立幼稚園及び保育所を就学前施設として一体的に捉え、順次認定こども園に再編します。
なお再編にあたっては、民間事業者による認定こども園の設置と併わせて、市立認定こども園の設置も進めます。
市立認定こども園では、これまで市立施設で培ってきた知識や経験を継承するとともに、小学校との接続カリキュラム等の研究・開発、民間園への普及・支援といった役割を果たしていくよう、地域(3次生活圏)ごとに原則1箇所の市立認定こども園を設置します。
Q、具体的に再編される施設(市立幼稚園、保育所)はどこなのか。
再編方針は、今後の進め方の大きな方針(市としての考え方・方向性)をお示しするものです。
再編内容は、市域各エリアにおける児童数、待機児童数、就学前施設の開設状況等をもとに、今後策定します「(仮称)岸和田市立幼稚園及び保育所再編個別計画」でお示しします。
なお、個別計画は、原則、再編実施予定の前々年度までに、その都度公表します。
Q、他市の状況はどうなっているのか。
就学前施設の市立施設と民間園の割合を比較した場合、本市の市立施設の割合は56.7%であり、府内平均の29.0%と比べて高くなっています。
大阪府内 教育・子育て施設の現況 [PDFファイル/105KB]
本市で公立の割合が高い理由としては、他市では、少子化の進行に伴い市立幼稚園・保育所の再編統合・民営化を進め公立施設は縮小しましたが、本市では保育所の民営化にとどまり、十分に取組を進めずに現在に至ったためです。
今後、ますます少子・高齢化の進行が予想される中、将来世代へ負担を先送りしないためにも、早急な対応が必要です。
市では市立幼稚園の小規模化の解消、待機児童の解消、施設の老朽化の解消、更には保育ニーズの高まりによる子育て支援を目的に、子ども・保護者にとってより良い教育・保育環境の充実を図るため、市立幼稚園及び保育所の再編を進めます。