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この「令和7年度施政方針」は、2025年(令和7年)6月23日の岸和田市議会定例会において市長が説明したものです。
令和7年第2回定例市議会の開会に当たり、補正予算案及び関連諸議案を提出し、令和7年度の市政運営に臨む私の基本的な考え方を申し上げ、議員各位をはじめ、広く市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
令和4年11月に市制施行100周年を迎えた本市は、城下町を基礎に工業都市として発展してきた歴史と伝統のあるまちです。
私は4月6日の市長選挙におきまして、多くの市民の皆様のご信任を賜り、その歴史と伝統のある岸和田市政を担う機会をいただきました。市長就任から約2か月半が経ち、市政の舵取りを担うことへの期待とその責任の重さを実感しているところです。
市長就任に当たって、先の第2回臨時市議会で「市民との対話と共創」、「子育て・教育の充実」、「スポーツによる地域の活性化」等の所信を申し上げました。そのことを着実に実現していく第一歩として、令和7年度における市政運営は大変重要なものと考えています。
私が市政を担おうと思うきっかけとなったのは、かつて泉州の中心として地域を引っ張ってきた活気溢れた岸和田市が、次第に元気をなくし、昨年末からは市政が混沌とする中、市政に対する市民からの信頼が揺らいでいる状
況に強い危機感を持ったことでした。市民の皆様が安心して暮らすことができるまちづくりを行うためにも、市政の正常化と信頼回復が急務だと考えてます。
そこで、本議会において、「岸和田市長の政治倫理に関する条例」を提出させていただいたことで、まずは私自身が率先して、市民全体の奉仕者として政治倫理のより一層の向上に努めるとともに、市民に信頼される市政を進めてまいります。すでに議員の皆様には「岸和田市議会議員政治倫理条例」がございます。私も議員の皆様と同じく自らを律し、市民のために全身全霊で市長の職務を全うしてまいります。
また、市民からの信頼回復のためには、行政の透明性を高めることが重要だと考えます。そこで、地域住民と行政が直接対話することで、地域課題を共有し、住民の意見を反映したまちづくりを推進するため、各小学校区でタウンミーティングを開催してまいります。市民の声に真摯に耳を傾け、市民が直面している課題に素早く取り組むことで、市民の皆様に寄り添った市政運営、「市民との対話と共創」を実現してまいりたいと考えています。
今、時代は大きな転換期に差し掛かっています。総人口の減少に加え、社会の支え手となる生産年齢人口の減少と高齢者の増加が一体的に進む、厳しい時代を迎えています。このことは決して他人ごとではなく、国勢調査の結果によると、本市においても、平成17年の20万1,000人をピークに人口減少が続いており、平成14年以降は転出数が転入数を上回る社会減も続いています。特に30歳前後の子育て世代の転出傾向が顕著となっており、本市にとって大きな課題であると認識しています。
そのため、子育て支援・教育の充実が特に重要であると考えています。子どもたちが健やかに成長できる安心で安全な環境を整えることは、未来の市民のためであり、本市の未来を切り開くことにもつながります。保育・教
育・医療等の各分野で、安心して子どもを産み育てられるまち、子どもが安心・安全に成長できる環境づくりに注力し、「若い世代から選んでもらえる岸和田市」をめざしてまいります。
また、本市を「日本一のスポーツのまち岸和田」として発展させることで、地域の活性化に取り組んでまいります。運動・スポーツは、市民が健康で豊かな人生を送るために欠かせないものの一つです。幼少期からの運動習慣の定着は、健康増進や体力向上のほか、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸にもつながります。子どもから大人まで全世代の市民の健康づくりとしてのスポーツ振興をはじめ、スポーツに親しめる環境を整えるとともに、パラスポーツなど誰もが安心してスポーツを楽しむことができるよう、人材確保にも努めてまいります。
さらに、スポーツを始めるきっかけとなる大規模スポーツイベントなどの開催・誘致に加え、市民とトップアスリートが触れ合う場をより一層提供できるよう努めるとともに、スポーツを通じて本市の魅力を国内外に発信してまいります。このほか、スポーツ団体や民間事業者、大学等とも連携し、スポーツ活動の推進に取り組むとともに、施設整備も進めることで、交流人口の拡大と地域の一体感を育むまちづくりを推進してまいります。
未来の市民も安心して暮らし続けていくことができるまちであるためには、今後の社会経済環境の変化にも適応することができる、新しい時代の岸和田市政への変革を成し遂げる必要があります。本市はこれまで繰り返し財政危機に陥っては、その都度、市民の皆様とともに、行財政改革の取組でそれを乗り越えてきました。しかし、財政構造がぜい弱であるという課題は克服されていません。今後、再び財政危機を招くことのないよう、また、大規模な災害や経済情勢の急激な変動に見舞われても、市民の暮らしをしっかりと支え続けていけるよう、さらに岸和田の輝かしい未来に向けた投資が可能となるよう、引き続き、安定した行財政基盤の構築に向けて取り組むことが必要だと考えています。このような認識のもと、私は先頭に立って、行財政の構造改革に取り組んでまいります。
この改革を進めるに当たり、私は、何よりも、「市民全体の立場に立って、市民と同じ目線で考えること」が大切であると考えています。ここで言う市民には、大人だけではなく、子ども、そして、これから生まれ、このまちで暮らしていく市民も含まれます。現代に生きる私たちが、未来の市民に対してしっかりとその責任を果たすため、そして、将来、この一歩が、のちの岸和田市政の発展と成長に大いにつながったと言っていただけるように、未来志向の行財政改革に全力で取り組んでまいります。
なお、市民の暮らしと命を守り、持続可能な地域医療提供体制を確保していくため、市立岸和田市民病院では、「経営強化プラン」を着実に実行していくとともに、引き続き「急性期医療・がん治療・救急医療の推進」を病院目標に掲げ、公立病院としての市民病院の役割を果たしてまいります。経営形態の見直しについては、同プランの検討結果とこれまでの経過やこれからの日本の医療のあり方を踏まえつつ、慎重に判断してまいります。
続いて、私が本市の地域経済の活性化に資するために重要だと考える取組について2点申し上げます。
まず1点目として、国民の水環境保全に関する認識を深め、豊かな海を次世代に引き継いでいくため、令和8年11月14日・15日に開催される「第45回全国豊かな海づくり大会~魚庭(なにわ)の海おおさか大会」については、本市の南海浪切ホールで式典行事が行われることが決定いたしました。大会の成功に向け、大阪府をはじめ府内市町村や関係団体等とともに機運醸成を図る取組を進めてまいります。
2点目としては、地域活性化を支える広域的な交通の軸を形成するため、昨年度から測量などを実施している泉州山手線の整備促進に向け、引き続き大阪府と連携・協力していくとともに、今年度も地元関係者の皆様と広域交流拠点である山直東地区のまちづくりを積極的に推進してまいります。
ここからは、今年度の取組について、私が選挙時にお示ししました「岸和田をよくするための4本柱」と「岸和田の未来投資戦略」に基づき、本定例会に補正予算案、いわゆる肉付け予算案として提出いたしました主なものについて、ご説明いたします。
まず、「岸和田をよくするための4本柱」の1つ目、「市政の正常化と信頼回復」についてです。
日常の生活において住民相互の連絡などの地域的な共同活動を行い、地域社会において重要な役割を担っている町会・自治会・市民協議会等は、岸和田が誇る地域コミュニティを支える柱です。市民や事業者が活発に交流し、様々な活動に取り組めるよう、地域コミュニティの基礎である町会・自治会の活動を支援してまいります。また今年度の新たな取組として、持続可能な町会・自治会の組織体制や活動内容について、町会・自治会や外部有識者とともに検討を行ってまいります。
次に、「岸和田をよくするための4本柱」の2つ目、「教育福祉の充実」については、子育て家庭の経済的な負担軽減などを積極的に行い、子育て世代の定住促進を図るため、2学期以降の学校給食費を無償化いたします。令和8年度以降につきましては、国の動向を注視しつつ、無償化の検討を進めてまいります。
また、教育・保育施設運営支援として、食料品価格の高騰を保護者負担へ転嫁せず、影響を受ける民間保育施設を支援するため、補助金を支給してまいります。
次に、昨年4月から設置した「こども家庭すこやかセンター」において、母子保健業務と児童福祉業務の連携をより強化し、妊娠期から出産・子育て期まで継続して伴走型の相談支援を行うことで、妊産婦や子育て家庭の孤立感や不安感を軽減するとともに、健康診査などの機会に子育てに困難を抱える家庭を把握し、福祉面からの支援や児童虐待の未然防止・早期発見・早期対応に取り組んでいます。そして、さらに支援の充実を図るため、家事・子育て等に不安や負担を抱える家庭などを対象に、訪問での家事支援や育児・養育支援を行う「子育て世帯訪問支援事業」を実施してまいります。
保育の質の確保・向上が求められている中、保育士の確保が課題となっています。そのため、新たに民間保育施設で勤務された方に、岸和田市保育士就職サポート給付金・就職祝い金を給付いたします。
また、子どもの保育・教育環境の向上のため、「市立幼稚園及び保育所再編方針」に基づく個別計画を推進し、市民の皆様の不安を解消しながら、より良い教育・保育環境の充実に取り組んでまいります。
今年4月に、市立では初めてとなる幼保連携型認定こども園「市立旭・太田こども園」を開園いたしました。今年度は引き続き、令和8年の開設を予定する(仮称)市立春木・大芝認定こども園の工事に着手するとともに、令和9年の開設をめざす、(仮称)市立桜台・光明認定こども園の整備に向けた取組を進めます。また、市立大宮保育所・大宮幼稚園の再編に向けた取組も進めてまいります。
さらに、市立幼稚園の小規模化が想定以上に進んでいることから、一定の集団規模のもとで教育の実が挙げられるよう、幼稚園単独での閉園基準などの検討を進めてまいります。
この間も、児童・生徒数の減少が進んでおり、学校の小規模化による教育課題がますます大きくなっています。今後、とりわけ子育て世代を中心に、市民の皆様と、この問題を共有し、話し合いを進めることで、良好な教育の提供のために必要な再編が進められるよう、現在の「岸和田市立小・中学校適正規模及び適正配置実施計画(第1期)(案)」の取り扱いも含めて、主管する教育委員会とともに検討を進めてまいります。
「日本一のスポーツのまち岸和田」の実現に向け、スポーツ施設の整備とスポーツ振興を進めていくため、他の運動広場に比べて利用者数が多い、牛ノ口公園運動広場について、グラウンドの排水改善や整地、トイレの改修等、利用者の安心・安全・快適を確保するための全面改修に着手してまいります。
子育て世代の定住促進と子育てしやすいまちをめざす取組として、本市の地域資源や魅力をより積極的に市内外に発信し、イメージ向上に取り組むため、市民の皆様や「岸和田のファン」の方々と一緒に、改めて本市の特性について考えるミーティングを開催し、どのような暮らしができるまちなのかを明確にするとともに、どのような人がその暮らしに共感するのかを調査することで、市外在住者を対象としたシティセールスのターゲットを明確化してまいります。
次に、「岸和田をよくするための4本柱」の3つ目、「地域経済の活性化と雇用創出」については、丘陵部の「ゆめみヶ丘岸和田」において、企業誘致や住宅地供給に加え、商業施設とも連携し、引き続きにぎわいのあるまちづくりの実現に向け取り組むとともに、今年秋頃の基盤整備完了をめざしてまいります。また自然エリアについては、民間企業やまちづくり協議会とも連携しながら、地域課題である竹資源の循環などを促すための拠点整備を進めてまいります。
市内産業振興のための新たな取組として、これまでの産業集積促進地域における工場・倉庫等の新規立地に対する助成に加えて、市街地におけるオフィスや営業所の新規立地に対しても助成をすることで、様々な業種の企業誘致と新規雇用の創出、特に若者が市内で働く場の確保を図ってまいります。
また、地域資源の価値や魅力を活かした水産業の振興、魚食教育の推進、地域活性化の拠点形成等を図ることを目的に締結した「岸和田市水産業戦略に関する連携協定」に基づき、IoT(アイ・オー・ティー)やAIを活用した漁場予測システムの導入などに一体的に取り組むデジタル水産業戦略拠点整備推進事業を関係団体とともに取り組むとともに、阪南1区北東部の下水道整備に着手してまいります。
さらに、農業者の減少、高齢化による遊休農地の増加に歯止めをかけ、農業の持つ多面的機能を保全するため、集落の人たちが力を合わせて一緒に営農を行うために必要な農機・施設等の整備支援を行ってまいります。
国がめざす「観光立国」の実現には、地方への誘客が重要です。そのため、「食」を中心とした観光コンテンツの開発として、地域に根差した食材を活用した岸和田グルメをテーマにコンテストを実施し、地域の皆様とともに岸和田市の「食」をPRし、協働で本市の観光まちづくりをめざす取組の一つとしてまいります。
次に、「岸和田をよくするための4本柱」の4つ目、「防災・安全なまちづくり」です。
田治米畑町線は、磯之上山直線を起点とし、貝塚半田流木線に至る市内における南北軸の重要な路線であり、本事業区間は、そのうち府道春木岸和田線から星和上松台までとなり、市内の東西軸である岸和田中央線と岸和田港福田線を接続しています。「岸和田市地域防災計画」において地域緊急交通路に指定されており、防災上も重要な路線であることから、当該区間の整備を行うことで、災害時における輸送路の確保を図ってまいります。また、本路線は「岸和田市交通まちづくりアクションプラン(総合交通戦略編)」において、市内幹線道路の整備推進路線に位置付けられています。交通処理機能を強化し、通学路の交通安全を確保するとともに、泉州山手線完成後に予想される周辺道路における交通渋滞の解消を図ってまいります。
また、緊急地震速報など国からの情報について、防災行政無線などを用いて瞬時に伝達する、全国瞬時警報システム(Jアラート)の受信機を更新してまいります。
続いて、「岸和田の未来投資戦略」についてです。「市役所新庁舎の建設」については、老朽化が著しく、耐震性に問題のある現庁舎の早期建て替えは喫緊の課題です。福祉総合センター横敷地における新庁舎の建設を進めてまいります。
「岸和田駅・東岸和田駅等の民間活力等による駅周辺再開発」として、岸和田市の将来を支える、広域連携型都市構造の実現に向け、泉州山手線の整備に合わせ、将来の南海泉北線の延伸を見据えつつ、LRT、BRT、自動運転等の可能性も含め、早期に実現可能な交通手段の導入に向け検討してまいります。また、市内の東西交通の円滑化と市街地の一体化を図るため、南海本線春木駅・和泉大宮駅付近を対象とした連続立体交差事業の検討にも取り組んでまいります。
「誰もが人権を尊重されて取り残されない岸和田」として、地域経済や教育・福祉等の市民生活を支える路線バスを今後も維持・確保しつつ、更なる利便性向上、利用促進を図るため、泉州山手線の延伸に伴う路線バスの再編や、今年秋に予定しているローズバスのルート変更などに取り組んでまいります。
また、交通弱者の方々を中心に多様な世代の移動ニーズを踏まえた利用しやすい地域交通の実現に向け、特に公共交通の利用が困難な地域である春木大芝地区や黄金塚地区における取組を踏まえ、地域の皆様とともに地域主体による交通手段の確保などへの対応を進めてまいります。
誰もが安心して利用できる公園のバリアフリー化について、都市公園特定事業として位置付けられている中央公園などの園路やトイレ等の改修工事を進めてまいります。
がん患者の治療と就労や社会参加の両立、療養生活の質の向上のため、治療の副作用による脱毛や乳房切除等の外見(アピアランス)上の変化を補正する、医療用ウィッグなどの購入費用の一部を助成してまいります。
最後に「環境対策」や「業務の効率化」などについてです。
地球温暖化対策として、照明のLED化については、省エネによる二酸化炭素排出量の削減はもちろんのこと、電力調達コストの低減及び器具の長寿命化による更新コストの抑制を図ることができます。そのため、総合体育館をはじめとする市有施設などについて照明のLED化を進めてまいります。
情報技術などを活用して、本市の課題解決や利便性向上をめざすスマートシティの取組では、大阪総合行政ポータル「my door OSAKA(マイド・ア・おおさか)」を活用し、市民一人ひとりのニーズに合わせた情報提供を実現し、市民生活の質の向上につなげてまいります。
現庁舎においては、老朽化しているとはいえ、建替までにはまだ時間を要することもあり、来庁者の利便性向上・快適な利用を図るため、トイレの洋式化や温水洗浄便座を新たに設置するなど、庁舎内設備についても必要な整備を行ってまいります。
令和7年度の主な取組についての説明は以上となります。
今回、提出いたしました補正予算案について、一般会計の補正額は21 億452 万3千円で、補正後の額は947 億5,222 万円、介護保険事業特別会計の補正額は878 万4千円で、補正後の額は200 億9,988 万3千円、下水道事業会計の資本的収入の補正額は6,046 万7千円で、補正後の額は41 億546 万9千円、資本的支出の補正額は6,050 万円で、補正後の額は64 億7,579 万5千円となります。
以上、令和7年度の私の市政運営の基本方針と補正予算案及び関連諸議案の概要についてご説明申し上げました。
これらの政策を実行していくことは、私一人では当然できるものではございません。市民の皆様との共創、議会との真摯な議論、そして、職員と一丸となり「岸和田をよくするために」という目的のために、柔軟な発想と創造性を活かし、知恵を絞って取り組むことで実現可能となります。そのために、私は誠心誠意、市政運営に臨んでまいります。
なにとぞ、市民の皆様や市議会の皆様の一層の温かいご理解とご協力を賜りますよう、心からお願い申し上げます。